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中野13時36分

中野のスタバ。13時36分

甘ったるいはずのホワイトチョコレートマカデミアクッキーは、やっぱり甘ったるい。ガラス越しに揺れる桜の花もやっぱり綺麗なのだ。

か細い自尊心がぽきっと折れる音が聞こえた。

ああ、ただ汚いものに触れたい飲み込まれたい、汚物のような今の気分にここは似合わない。こりゃしまったと思った。

皇族の噂を語るピンクのスカーフを巻くマダムのパンプスを奪って匂いを嗅ぎたいくらい、それくらいしか汚いものが見当たらない

 

パパパ

 

その瞬間を私は覚えてないけど、たしかに私は教室の隅に落ちた消しゴムを拾うようにマダムのパンプスを脱がした

 

マダムの丸く開いた眼球に映るのは私である、茶髪が似合わない私である

 

黒い高そうな靴を握る手から汗が滲み、滴る

 

「これ、下さい、」

「はい?」

「あの、これ、下さい!!!」

 

ヒィと引きつったほうれい線は日本海溝のように深い

響く店内BGM。

 

「代わりにこれあげます!」

店内の客はみんなこの奇妙な物語の行方だけに五感を傾けている。

 

買ったばかりのコンバースを脱ぎ捨て、マダムの足元に置き、私は逃亡することになった。

桜の花びらが髪の毛に絡まったことにも気づかないくらい、私は必死に走り続けたf:id:jasmine31x:20170412141007j:image