羽田空港 ロビー 午前6時28分

‪特に意味はないけど、航空券もないけど早朝の羽田空港行きたい

 

アンニュイな空気と新鮮でパキッとした朝日が交差する空港ロビーのソファーに腰をかけているのは、

黒髪ボブ、ジーパンにTシャツ、目の粗いカーディガンを羽織りiPhone付属イヤホンを耳に装着したどこにでもいそうな女(18)

 

どこにでもいそう  って?

 

ちょっと表情を作ってみよ

 

①7時35分 羽田発 ケニア:ジョモケニヤッタ空港着

アフリカへボランティアに行く偏差値高い大学1年生の顔

 

幸せの定義とは。

私だってしっかり苦しんでいる。同時に襲ってきた苦しい状況に耐えきれずもう限界となった時“メンヘラは甘え、弱いからなるもの、耐えろ笑えなんとかなる”という自分の根であるものが崩れかけた。

この世の中を今の性格で生きることは難しい。

強さが伴わないと純粋馬鹿素直ではいられないことを知った。大人になるってそういうことなんでしょ。

家もありご飯もある。友達はほとんどいないし、恋人もいないし家族もバラバラだが、

私は文明の中で生きれている。それだけの財はある。

当たり前ができない人々もいるのに自分は贅沢だ。そういった人々に比べれば私は幸せだ。

こういった考えでどうにか自分を慰めようとしたがすぐ愚かであることに気づいた。

 

あの子の家に行った時に感じたドキドキとした嫉妬心と変わらない場所からこの感情は湧いている。くだらない。

あの子と私は同じ人に好意を寄せていた。

泣きたくなるくらい理想の“帰りたい場所”を彼女は持っている。他にも...

私にないものを持っているのだから、この恋くらい。

そんなもので人間はかれないってことくらい分かっていた。彼女にない魅力が自分にあることだって分かっていた。

 

全く自己中な思考だ。

高校時代に経験した誰にも言えない、墓場行きの、深海の底から海面を見つめるような恋愛の果て

もう自分が普通ではいられないと悟っていた

自己肯定が低い人間だったが、今回の出会いは自分にとって特別で、この人によって私は悟りから解放されるのかなというような気がして、ぐっと自分を受け入れ行動してきた。はずだった。そんな考えが少しでもよぎったこの、浅はかな自分が嫌で嫌で仕方なかった。

 

あの子だってあの子なりの苦しみがあるはずなのに。

人間誰しも苦しいはずなのだ

金持ちには金持ちなりの、貧困、紛争の中で生きる人々が人生で感じ得ない苦しみがある。

だが、後者から目を背けてはいけないと、今いる自分の環境では感じない理不尽さをこの目でみたい

 

大学帰りのバスで聴こえた歌詞

 

それにしては随分とわりな合わないな!

 

そうだわりに合わない。冷静にどう考えてもここ半年の自分の思考と行動と襲ってくる不幸はわりに合わない

裏切られ裏切られ裏切られ。

 

でもそんなもんなんだ

最初から見返りを求めてないようで人間実は求めてる、その時点でおかしい腐ってる

世の中理不尽すぎるから

 

失恋で海外に飛ぶなんてありがちすぎてダサい、惨めすぎるよって少し思うとこはあるけど、自分はこんな人間だ。この程度の人間だ。薄っぺらい自尊心なんて捨ててやる。太宰の女生徒じゃないけどこの先幸せがやってくることもないのでしょ。大人はそんなことないよというけど18の自分はそう思えない。

そういう運命なんだ。

それでも別に良い。

 

他人を本当に好きになれて、 なんとなくだけど本物の愛が分かってきて、ぶつかって、失敗して

ちょっと前より世の中を理解できた私は彼より全然幸せだ。

 

幸せ

 

嘘をついて家を出た。

自意識過剰な今だからこそ無心で見るべきものがあるはずなの

 

キャビンアテンダントに憧れる都内女子大生の顔

 

CAなんて簡単になれる仕事でもないし、楽な仕事でないことくらい分かってる

でもこの仕事自分にピッタリだと思う

カフェのバイトでもお客様にチヤホヤされるし。

私は美しいから

顔の造形が特段優れているわけではないけど、それも含めて自分に自信がある

 

あと、色々なところに行きたいから。

色々な世界を知りたいから。世界中を回るっていう物理的な面もあるけど、接客を通して何かを得たいの。

面白いと思わない?

はじめてあった人にあれだけ長時間対応するのって。

 

手帳型スマホケースの鏡に自分の顔を覗かせ、桜色のリップを塗り直した。

ヒールの音が近づいてくる。

大きな大きな窓から差し込む朝日がファンデーションがピタリと張り付いた肌を照らす

 

この音を聞きにきた

 

カツカツカツ

カツカツ

カツ

 

③留学が終わり日本に帰国する彼氏を待っている18歳の顔

 

ふぅ

まずなにを話せばいいのか、どんな顔をすればいいのか

相手が変化しているのは確かだ。自分はどうなんだろ。グーグルフォトを開き半年前の自分の写真をみる。髪が長い。眉毛はちょっと太い。今より少し膨よかな顔。今季は買わないだろうなっていう系統の服。なんとなくだけど今より自分に自信がなかったと思う。

 

別れるときざわざわとした空港で瞳をしっかり見つめた。しっかり。

なのにあの時の、いやあの人の顔をはっきり思い出せない。モザイクがかかったようにぼやぼやする。

 

胸の奥がホッとするような嬉しさを際立たせるのはキリキリする胃の痛み。

トイレは何処だろう。

広くて迷いそうだけど、きっと、なんとかなる

チラッと下唇を舐めた

 

④大学サボって意味もなく羽田空港にきた美大生の顔...

 

なーんだ現実が一番面白いじゃないって結論に至ったら

 

なんとなくフラッと免税店で香水のテスター手首に振りかけCAみたいに背筋伸ばして歩いてみて、売店で缶コーヒー買って飲んだら

日本人で溢れる電車に揺られて帰宅。一人部屋でサッポロ一番食べてぼけーっと相棒でもみるの

 

 

新宿駅中央改札はどこ

私も私のことよく知らないし、と

深夜、人が沢山でビルも沢山なとこをフラフラと、どこを歩いてるのかも分からなかった

牛乳がテーブルにサーッとこぼれたみたいに頭の中が真っ白

フゥフゥという自分が吐く淡い息

バッグの布越しのライン通知の振動で自分が現実を歩いていることをハッと確認した

あなたはとても危険でとても綺麗よ

とその文字が刻まれたiphoneSEの明かりを指に照らし剥がれかけた薄ピンク色のネイルを眺めた 

 

はいはい

 

たしかにそこは新宿駅なのに、サーッと夜の海辺の波の音が聴こえた気がして

耳をすますと頭の中でホイッスルがピー!と鳴った

 ボウソウシュウリョウおめでと

タダもう前の自分には戻れナイヨ

 

桜が散ってから蝉の抜け殻が崩れる間に流した涙液も身についていた6キログラムの行方も知らない

不器用で要領悪くて空回り空回り

ただ、だからこそ馬鹿素直で、まっすぐでいたかった

それが相手を傷つけるかもしれないことに気づけなかった

本当に自分は あほ である

 

帰ろうと思ったけど帰るって

ただいまの場所が分からない 

 

白い天井、静寂の中で蛍光灯がウォンウォンと微かに鳴ってて

いつまでもその白を眺めていると頭がボーッとするから、冷凍庫までフラフラ歩き6個入りのミニカップアイスを手に取った

 

微熱が伝って、いつもより少し溶けるのが早いの

エロいな

 

バニラで正解だった

甘い以外の味ほとんど感じないんだもん

 

思い出したくもないのにここ数ヶ月がシャトルランみたいに脳内を駆け巡る

 

いや、熱のせいで、ぼーっとワードが駆け巡る

 

未完成みたいな完成された門、西武線、ジャニスジョプリン、アンナカリーナ、木炭、ゲーブン、落ち葉、スタビ、鴨、都市開発、中央線、君の名は、イラレ、花園神社、川越、ナンバープレート、愛と恋愛の違い、玉川上水、カフェグラッセ

 

もうきっとあの日みたいに走れないや

つくり笑いもしないや

 

 

ああ、アイスうまか

 

甘くて

 

井の頭線に揺られながら

マスカラで固まったまつ毛をサラリと撫でた

この指に伝わる感触を、どこへ還元したら良いんだろ。

 

曖昧を明確にしたいのか、

それとも明確を曖昧にしたいのか

 

広い海の上をずっと漂流してるみたい、なかなか着地できない

 

考えて考えてる自分に足りないのは、

案外シンプルなものなのかもしれない

 

シンプルなものが鍵になるのかもしれない

 

 高い宝石なのか、その辺に落ちた石やガラクタなのかわからないけど

 

 

 

 

 

 

鯉のぼり

失う朝を跳ねてゆく

真っ赤なバレエシューズで

愉快に跳ねてゆく

 

鋭い風を諸共せず、それを動力に変えて

脚にまとわりつくような冷気が心地よく、ワンピースは羽のようになびく

 

音に酔い、景色に酔う

東京都上空を旋回しておりました

 

イヤホンが壊れたとき

 

桜の花びらが地上から姿を消しはじめたことにハッと気づいた

 

油断

 

漆黒。カラスが私の胸を引き裂いたのは偶然なんでしょう

 

白いワンピースに血が滲み出し、徐々に赤色の面積が増えていく

 

身体を浮かせたまま、茫然と断腸の痛みに悶える

 

私の白いワンピースは完全に血で染まりました

それが白いワンピースであったことが遠い昔であるような

 

次第に身体が重力を感じはじめ、ゆらゆらと地上へと降下していく

 

私の心臓が落ちた場所は、中央線吉祥寺駅

プラットホーム

 

パンッ!と、鯉が水面から勢いよく跳ねるような、そんな音が響いた

 

時刻は0時少し前

 

 

 

 

23時

運ばれてきたカルアミルクは、想像より可愛いらしかった。

けどホイップクリームの上にちょこんと乗ったサクランボは小さいながらも凛としている。

“二次会”な、騒めく光を反射し、空間をサクランボ色に染めた。

 

初めてカルアミルクを飲む彼、

弱いのにビールを飲む彼

その横でマンゴーサワーを飲む色っぽい彼女と

その前でポップコーンをむさぼる誰か知らないあの人や、

サメ映画を語る先輩

 

ショコラオランジェ、ショコラオランジェ

この時間のパフェは罪の味

オランジェってフランス語?クリームを掻き分けてもオレンジが見当たらない。

お洒落な名前だけど

実質はチョコバナナパフェ

名前負けに屈するものかと張り合うような芯がある美味しさに頰を落とす

 

あああー!

なんて若いんだろう!

 

終電前、ビール1杯でベロンベロンな彼に水を買って渡す

 

「君、水を買うなんて、今日は雨が降ってるから合理的じゃないじゃないか!」

 

 

そうだ今日は雨だ

 

夕方から降りはじめた春の雨はしっかり本降りになった

 

ゲロとガムが散乱した冷たいコンクリートに寝そべって、この大都市の片隅で、大きく大きく口を開こう

 

喉の乾きを癒し、酔いをさますのは春の暖かな雨水

ミネラルウォーターは冷たすぎる

すべすべとした肌に滴る雫が、排水口に流れるまでは今

 

頑張ってみるよ

若いのだから

 

中野13時36分

中野のスタバ。13時36分

甘ったるいはずのホワイトチョコレートマカデミアクッキーは、やっぱり甘ったるい。ガラス越しに揺れる桜の花もやっぱり綺麗なのだ。

か細い自尊心がぽきっと折れる音が聞こえた。

ああ、ただ汚いものに触れたい飲み込まれたい、汚物のような今の気分にここは似合わない。こりゃしまったと思った。

皇族の噂を語るピンクのスカーフを巻くマダムのパンプスを奪って匂いを嗅ぎたいくらい、それくらいしか汚いものが見当たらない

 

パパパ

 

その瞬間を私は覚えてないけど、たしかに私は教室の隅に落ちた消しゴムを拾うようにマダムのパンプスを脱がした

 

マダムの丸く開いた眼球に映るのは私である、茶髪が似合わない私である

 

黒い高そうな靴を握る手から汗が滲み、滴る

 

「これ、下さい、」

「はい?」

「あの、これ、下さい!!!」

 

ヒィと引きつったほうれい線は日本海溝のように深い

響く店内BGM。

 

「代わりにこれあげます!」

店内の客はみんなこの奇妙な物語の行方だけに五感を傾けている。

 

買ったばかりのハイヒールを脱ぎ捨て、マダムの足元に置き、私は逃亡することになった。

桜の花びらが髪の毛に絡まったことにも気づかないくらい、私は必死に走り続けたf:id:jasmine31x:20170412141007j:image